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“債務償還年数”で企業の真の健全性を測る
企業経営において、借入金は成長のための重要な資金源です。しかし、返済能力の判断を誤ると、資金繰りの悪化に直結するリスク要因にもなります。
数字上は黒字でも、実際には返済余力が乏しいケースは珍しくありません。そこで、経営診断や金融機関の融資判断で重視されるのが「債務償還年数」を中心とした返済能力分析です。
借入金返済能力とは
借入金返済能力とは、企業が将来のキャッシュフローでどの程度の期間をかけて借入金を返済できるかを測る指標です。
一般的な算式は以下のとおりです。
借入金返済能力(年)=(短期借入金+長期借入金)÷営業活動キャッシュフロー(FCF)
この値が示すのは、事業で生み出したお金を用いて借入を完済するまでに要する年数です。
一般的な目安は以下のとおりです。
| 債務償還年数 | 判定 |
|---|---|
| 3年未満 | 健全 |
| 4〜10年 | 注意が必要 |
| 10年以上 | 借入過多(改善が必要) |
短期的な利益変動に惑わされず、キャッシュフローを通じて返済余力を評価することが重要です。
よくある誤った分析方法
一部の経営者は、「貸借対照表の現金で借入金を割る」「売上高と借入金を比較する」といった簡易的な計算に頼ることがあります。
しかし、現金残高は一時的な数値に過ぎず、継続的なキャッシュ創出力を反映しません。
また、売上高のすべてを返済に回せるわけではないため、返済能力の指標としては不適切です。
金融機関が注目しているのは「利益ではなく現金」、すなわち返済原資となるキャッシュフローの強さです。
債務償還年数を改善する3つのポイント
① 営業キャッシュフローを増やす
本業の収益性向上が最も重要です。特に、減価償却費を通じた設備投資の見直しや、回収・支払サイトの短縮など、運転資金管理の改善が有効です。
② 借入金の内容を精査する
短期借入金が多いと、返済時期の重複により資金繰りが圧迫されやすくなります。
長期借入への借換えや、設備投資の返済期間を7年前後に見直すなど、返済計画の平準化を図ることが望ましいです。
③ 「借入金月商倍率」で体質を簡易チェック
借入金月商倍率 = 借入金 ÷(年間売上高 ÷ 12)
この値が月商の3倍以内であれば健全とされます。日常的にこの指標を把握しておくことで、資金調達や借換えの判断をスピーディに行う助けとなります。
銀行が見ている「返済原資」の本質
金融機関は返済能力を「税引後当期純利益+減価償却費」で確認します。
これは実際に現金として残る利潤部分であり、借入返済に充てられる実質的な額を意味します。
見かけ上の利益を膨らませるために役員報酬を過少にしても、金融機関は適正水準に修正して評価します。
つまり、粉飾的な改善は通用しません。
要するに問われているのは、「どれだけ現金を生み、安定的に返済余力を維持できるか」という点です。
診断実践協会が伴走する「数字で判断する経営」
経営者にとって、借入金の返済能力は単なる財務指標ではありません。
資金調達戦略の妥当性、投資判断、そして金融機関との信頼関係を左右する“企業の信用レンズ”です。
診断実践協会では、財務データをもとに企業のキャッシュ創出力と返済力を可視化する経営診断を支援しています。
数字の裏にある経営の実態を読み解き、持続的な価値創出につなげるための伴走を行っています。
借入金の返済能力を正しく把握することは、未来の資金繰り不安をなくす第一歩です。
ぜひ、経営診断の導入を検討してみてください。